大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)1133号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人財部実の上告理由について。

破産債権である指名債権の譲渡は、譲渡人がこれを破産管財人に通知し、又は破産管財人がこれを承諾しなければ、破産管財人に対抗することができないと解するのが相当である。

原審の確定したところによれば、大東京信用組合の保科工業株式会社に対する本件債権は、昭和三九年五月二三日右信用組合から秋元利夫に譲渡されたところ、その譲渡の通知は、保科工業株式会社が破産宣告を受けた同月二六日よりも後である同年六月二二日に右会社の代表者保科孝一に対しされたが、破産管財人である被上告人に対してされたものではないというのである。そうすると、たとえ、所論のように、右破産者宛の通知が破産管財人に配達され、破産管財人がこれを開披したとしても、破産管財人は右債権譲渡があつたことを知つたことになるにすぎず、これをもつては未だ右債権譲渡の通知が破産管財人に対しされたものとすることはできない。したがつて、前記譲受人秋元利夫は右債権譲渡を被上告人に対抗することができないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原審の認定にそわない事実関係に基づくか、又は独自の見解に立つて原判決を論難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例